電車に乗った。 わりと混雑していて、身動きが取れない。 明日ある男達は両手で吊革を掴む。 俺もそれにならって両手で吊革を掴む。 覚えのない言いがかりほど怖いものは無い。こんなところで一生を台無しにしてはならん。 この吊革を掴む両手は、万が一冤罪という雪崩が押し寄せて来た時にはザイルの様に命を救ってくれる筈だ。 しかし、被害者がいつも女性とは限らない。 ついに、俺にも「魔の手」は忍び寄ってきたのだ。 しばらく電車に乗っていると‥‥‥なんかケツがスッゴいもぞもぞする。 尻のレフトとライトの間に刻まれた渓谷を、何かが行ったり来たりしている。 何だ?一体何だ? 俺のブリッジを無断で頻繁に離着陸するモノは一体何だ!? そしてそれは凄まじい摩擦運動を繰り返し、ついに後ろから股の下を突き抜け、俺の眼下に現れる。 !? これは、‥‥‥‥傘だ。 俺の後ろで腕組みしているマダム肘にかけられているであろう傘が、電車が揺れる度に俺のケツを摩擦している。 マダム、正気ですか? いや、マダムは自分の黒いお洒落なアンブレラが己の意志とは無関係に俺の尻を撫で回している事には全く気づいていないようだ。 おお、マダム、今度は先端が私のブーツの中に侵入していますよ。 嗚呼マダム、何故気付かない?今あなたの傘は猛烈に我が国土を侵犯していますよ。 しかもそこは我が国にとってはとてもデリケートな領域だ。例え同盟連合国家間であってもおいそれと情報開示するような領域ではない。確かにそういった風習を持つ国家はあるだろうが、それはそれなりに特殊な性癖や慢性的な痔持ちだとかの場合であって、我が国は決してそういった文化や祭を推奨していないし、我が国の経済状況も非常に円満に潤滑している。 つまりあなたの侵犯行為は全くのお門違いか、テロ行為です。おやめなさい、やめろ、今すぐやめてくれ、我が国民が何かに目覚めるその前に! マダー――――ム! 結局次の駅でマダムは降り、その間俺はマダムの傘に尻をまさぐられっ放しだった。
by fozztone
| 2009-06-25 01:04
| グダグダ
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